
「クマとアメリカ・インディアンの暮らし」
デイビッド・ロックウェル著 小林正佳訳 どうぶつ社 より引用




動物たちは人間より先に創造され、そうした先住性や聖なる起源において、
人間の場合より遥かにグレイト・スピリット[創造神である偉大な精霊]に近かっ
た。だからこそ、人間は彼らを尊敬し、崇敬しなければならないのだ。彼らの
中にインディアンは、グレイト・スピリットのさまざまな特性の現実的な反映を
見い出し、そうした反映を読み取ることは、ほかの宗教の中で神の啓示によ
る聖典が果たしたのと同じ機能を果たしてきた。動物は神と人間を結ぶ媒介
者であり、絆である。このことは、なぜ神々へ向けての宗教的な祈りが動物を
通してなされるのかだけではなく、グレイト・スピリットとの接触、あるいはグレ
イト・スピリットからの接触が、なぜ、ほとんどすべて、動物やその他の自然の
事物を含むヴィジョン[幻影や夢の形をとってもたらされる啓示]を通してなされ
るのかを説明している。毎年秋の終わり、冬の到来を告げる大雪が降るのと
同時にクマは姿を消す。彼らは、すべての命の源であり、すべての生き物が
いつの日か還らなければならない大地の中に潜り込む。それから半年、地底
に横たわって死んだように眠り、その間、外の世界も彼らとともに眠りにつく。
春になって彼らは目覚め、巣穴から新しい世界の中に姿を現わす。大地それ
自身が生まれ変わった、新しい世界の中に。デラウェア族のようないくつかの
部族において、クマは直接大地の春の甦りに結びつけられ、新年の儀式の
中で祝われた。クマは、定期的に姿を消しては再び出現する。そのことから、
クリー族のような北方の狩猟部族は、クマを猟獣の回復・復活と関連づけた。
ほかの部族でも、治癒やイニシエーション儀式の中にクマが組み込まれてい
る。そうした伝統的治癒やイニシエーションは、基本的に更新の儀礼、すなわ
ち、死と再生の儀礼だったからである。からだの外見も生活の仕方も人間に
似ていたのと同じく、冬眠のゆえに、クマは、インディアンにとって重要な意味
をもっていた。クマは毛皮をまとった人間であり、親戚だった。彼らは、大地が
眠る時地下に赴き、大地が目覚める時姿を現わす。
(本書 プロローグ より引用)
目次
はじめに
プロローグ
1 クマは毛皮をまとった人間である
2 人はクマのように死にクマのように再生する
3 クマ狩りと狩りの儀礼
4 クマの毛皮、肉、骨、爪、歯
5 クマとシャーマン
6 〈クマ医者〉の治療効果
7 守護霊とシャーマニズム
8 クマと民話
9 〈ベアー・ダンス〉
10 クマと〈世界更新の儀礼〉
11 世界の神話に登場するクマ
12 夢や幻想とクマ
エピローグ
註
参考文献
索引
訳者あとがき
