「痛快!寂聴仏教塾」

一家に一冊! こころの常備薬

付録・「般若心経」読経&法話CD+寂聴特製写経見本

瀬戸内寂聴著 集英社インターナショナル


  







ようこそ「仏教塾」へ! 心さがしの旅の案内書 (本書より引用)



21世紀は、人間が、いつの間にか見失った「心」と取りもどし、人間らしく生き直す時代だと

わたしは思います。世界とか、地球とかの大きな単位でなくても、日本だけを見ても、なんと

私たちは大切なものを多く見失い、情けない暮らしをしていることでしょう。



私のような年寄りは、まだ子どもの頃、よき日本に生きていて、なつかしい。あたたかな思い

出をいっぱい持っています。でも今の世相は、その頃に比べたら、なんという寒々しい心貧し

い時代になったことでしょう。どうしてそうなったのか、今、それをふりかえって、見失ったもの

を探し求めないと日本の未来はないと私は思い、その危機感に日夜、おびやかされています。



世の中が悪くなったのは、物質にばかり眼が走って、お金ばかりほしがる生活態度が増えつ

づけたせいだと思います。お金さえあれば、何でも手にはいると思いはじめたのが、まちがい

の始まりです。一つボタンをかけちがったら、どのボタンもまちがってはめられます。思いきっ

て、最初のボタンから、かけ直しをしなければ、私たちのゆがんだ服は直りません。



目に見える物質やお金より、目に見えない大切なものに心の目を向けるべきです。目に見え

ない大切なものとは、心です。神です。仏です。宇宙の生命、エネルギーです。



長い年月にわたって、私たちの祖先が心のよりどころとしてきて、日本人のバックボーンに

なっていた仏教を、もう一度ふりかえってみるときがせまっていると思います。希望を失い、

学校嫌いになり、友だちさえもほしがらなくなった今の若い人たちに、何とかして、宗教や仏教

になじんでほしいと思うようになりました。それもさしせまった問題で、今すぐ、そうしてほしいと

思うのです。



そのため、出来るだけ、わかりやすい、読んで、見て、楽しい仏教入門書はないものかと思い、

いっそ私が書いてみようと思いました。絵をたくさん入れて、若い人たちが手に取りたくなるよ

うな本にしてほしいと思いました。



私は、さくらももこさんの大ファンなので、ももこさんの漫画をいっぱいほしいと思いました。そ

の気持ちを伝えてお願いしたら、超忙しの売れっこのももこさんが、快く引き受けてくれたので

す。私自身が、早くその本を見たくなって、心を弾ませて書きました。



まず若い人に、そしてお年寄りにも、ぜひ読んでほしいと思います。自分の「心」さがしの旅を

していただきたいと思います。この本が、あなたの心さがしの旅の、楽しいガイドブックになり、

地図の役目をしてくれることを祈ってやみません。旅の終わりには、きっと、釈迦にめぐりあっ

たあなたたちは、仏教を好きになってくれると信じています。



2003年3月 寂庵にて 瀬戸内寂聴



切に生きる (本書より引用)


ここまで戒名、お墓、仏壇の話をしてきたわけですが、それぞれの意味が分かって面白かった

のではありませんか。みなさんにとって、お葬式とか法事というのは、ただの形式としか思えな

かったでしょうが、それなりの意味や目的があるわけです。それがいつの間にか忘れられたと

ころに、今の仏教の問題点もあるわけですね。しかし、繰り返し強調しますが、葬儀や法要は

お釈迦さまがお説きになった仏法の本筋ではありません。お釈迦さまの教えは、あくまでも「ど

う生きるか」なのです。死んだのちのことを今から心配したりしても意味がない。人間の寿命は

誰にも分からないのだから、今、この瞬間を一生懸命に生きなさいということ。いつ死んでも悔

いが残らないような人生を送りなさいというのが、仏教の教えなのです。私の好きな言葉は「切

に生きる」です。中国の曹洞宗の祖師・洞山和尚に対して、ある僧が問いました。「今日はどん

な説明もいりません。一言で答えてください。いかなるか、これ清浄法身」 清浄法身とは、生

きた仏ということです。つまり、どうすれば悟りを開くことができるのか、という質問なのです。

これに対して、和尚はこう答えました。「われ、常に、ここにおいて切なり」 切とは切っても切

れないこと、つまり今、自分がしていることに没頭しきることです。切実の切、大切の切です。

食べるときも、切に食べる。眠るときには切に眠る。愛するにも切、学ぶにも切であれと言い

たかったのでしょう。死後のことを思いわずらうな。今、生きているこの一瞬を切に生きれば、

それでいいじゃないか、ということです。そうすれば、死を恐れることもない。やがて来るかもし

れない別離におびえることもない。浄土に行けるか、地獄行きなのかも心配する必要もない。

いつ心臓が止まっても、悔いることはない。私もまた、切に生きたいし、そのように死にたいと

思っています。明日のことを考えず、この一瞬一瞬を切に生きる。それができれば最高の人

生ではないでしょうか。そして、できうることならば、生きている間に、少しでも愛する人たちに

何かをプレゼントしたい。少しでも人のために尽くすことができれば、それこそ生きる幸せで

はないかと思うのです。もし、そんな人生が送れたとしたら、たとえ死んで地獄に落とされた

としても、けっして私は文句は言いません。もちろん、浄土に行けるに越したことはないけれ

ども、そんなことより今の人生を、あとどれだけ時間が残されているか分からない人生を、

切に生きることのほうが、ずっと大事ではないかと思います。


 


目次

ようこそ「仏教塾」へ!



第1章 愛・・・人はなぜ悩むのか

    出家の真相 人生にむなしさを感じるとき 「急ぐんだね」 三千仏礼拝

    人はなぜ愛に苦しむのか 別れられない理由 すべての悩みは、渇愛から生まれる

    絶世の美男子の悩み 人は渇愛から逃れられない 因果が分かると、心がしずまる

    運命は変えられる 人間の幸せは、どこにあるのだろう 「笑顔のプレゼント」



第2章 人間・釈迦の生涯

    お寺とは「同志」が集まるところ なぜ釈迦をブッダと呼ぶのか サーキヤ族の王子

    「人間の子」釈迦 脚色された「仏伝」 「殺すなかれ」の教え 憂鬱な青年

    「蒸発亭主第1号」 ヤソーダラーの怒り 「四門出遊」は真実か? 四苦八苦の人生

    釈迦が出家した二つの「理由」 インド人は出家好き? すべてを捨て、生まれ変わる

    無駄に終った6年間 スジャータの乳粥 「縁起の法則」の発見 「法の輪」が動き出した

    スーパーマンではなかったお釈迦さま お釈迦さまでも年をとる 「自灯明」の教え

    「人生は変えられる」



第3章 生き方を変える「四つの真理」

    四つの真理 「死にたくない」といった高僧 

    私たちが認識しなければ、この世は存在しない!? アダムとイブの物語

    もう一つの読み方 赤ちゃんを亡くした女 「日にち薬」 どうして煩悩は八つなのか

    「因縁」でこの世の仕組みが分かる 苦しみはどうやって生まれるのか

    すべては無明から始まる 原因をなくせば、結果は消える 悟りへの八つの道

    簡単だけれども、むずかしい。それが八正道 諸悪莫作、衆善奉行

    けっして一般論を言わなかったお釈迦さま



第4章 彼岸への細い道

    穢土と浄土 なぜインドには、お彼岸がないのか 浄土は西方にあり

    お盆はなぜ、真夏にするのか 浄土への白い道 南無とは「あなたまかせ」

    「信は任すなり」 神や仏を感じるとき なぜ、あなたは今生きているのか

    六波羅蜜と八正道 南伝仏教徒北伝仏教 心施・・・人は話し相手を求めている

    顔施・・・微笑の贈り物 いい嘘、悪い嘘 懺悔すれば、仏さまは許してくださる

    なぜ、耐えることが大事なのか 仏さまの功徳とは 智慧・・・仏さまのプレゼント



第5章 祈る心、信じる心

    観音さまとお地蔵さま なぜ、観音さまは人気ナンバー・ワンなのか

    菩薩が座らない理由とは 観音さまはスーパー・ヒーロー?

    信仰は“体得”するもの なぜ、人は神仏を信じるのか

    計画どおりに行かない。だからこそ人生。謙虚さを忘れた現代人 

    宇宙と一体になる 「祈る心」の不思議 「奇跡」は起こった 不眠不休の読経

    「祈りは通じるんだ」 人生の七難 理釈と事釈 親は子どもに何を教えるべきか

    三十三化身



第6章 なぜ、人は巡礼するのか

    中道の思想 歩くことは仏道修行 「大回り」同行記 大阿闍梨の「心眼」

    神通力とは何か 「無垢な心」が奇跡を産む なぜ、人は行をするのか

    六郷満山の回峰行 大宇宙との交信 修行者の呼吸法 「秘法」の助けで最後の山に

    日常から非日常の時間へ 巡礼装束は、死に装束 ポータラカ 10年間消えていた笑顔

    新しい自分に生まれ変わる旅



第7章 空の世界・・・般若心経入門

    お経とは「縦糸」 シルクロードを経て伝わった大乗経典 三蔵法師は名翻訳家

    600万字を266字に 「花の経」 お経の「功徳」とは 心の炎を静める 

    「痛快! 般若心経」 大いなる智慧の書 「空」・・・「般若心経」のメイン・テーマ

    この世は心が作りだしたもの 「とらわれない心」 色即是空 きれいもない、汚いもない

    「空の世界」は「無限の世界」 無明をなくせば、苦もなくなる 

    知識にこだわるな、自由になろう! 恐怖のない心 あなたの心にもダイヤの原石が

    呪とは「宇宙語」である 最上最高のマントラ 顕経と密教はコインの両面

    往け往け、彼の岸へ コラム 写経の手引き



第8章 「死後の世界」の大研究

    人生最大の謎 毒矢のたとえ 未知への旅 人は死ねば仏になる これが地獄だ!

    なぜ地獄物語は生まれたのか 葬式不要論者だったお釈迦さま 

    なぜ、葬式仏教になったのか 戒名とクリスチャン・ネーム 在家出家のすすめ

    戒名の文法 本当の供養とは 人間は忘れる動物である あなたは散骨を知っていますか

    「寂聴と眠ろう!」 なぜ、仏壇に線香とロウソクを立てるのか 切に生きる



第9章 終章 天台寺より

    桂泉観世音の御山 貧者の一灯 他人のために祈る 花祭りには、なぜ甘茶をかけるのか

    命の大切さを説いたお釈迦さま マイナスをプラスに変える 「和顔施」の教え

    人と人との「縁」を考える 死ぬのは怖くない 今を生ききる 般若心経のあげ方



特別付録CD・解説



2012年5月13日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。

画像省略

日の出(自宅より)



謝らなければいけないことがあります。それは前に投稿した瀬戸内寂聴さんの「戦時中の方が

マシ」という発言に関してです。



「生ききる」瀬戸内寂聴・梅原猛・対談集を読んで、私の発言こそ軽々しいものだったと感じさ

せられました。



確かに私の中では戦争と比較するものではないと今でも思っていますが、寂聴さんの原発が

ない世界、平和への想いが痛いほど感じられ涙が出そうになりました。



そんな寂聴さんの想いを汲み取ろうとしなかった自分自身の未熟さ・軽薄さを改めて教えられ

たような気がします。



寂聴さんや不愉快に思われた方々にお詫びしたいと思います。



梅原猛さんは随分前から原発廃止を訴えてきた方ですが、寂聴さんと同じように梅原さんの

言葉にも感激しました。



梅原さんとはキリスト教の捉えかたなど少し違うところもあるのですが、子供のようなみずみず

しい感性と、一途なまでに真理を探究するその姿勢は真の哲学者だと感じてなりません。



一本の木、その多くの枝は太陽の動く方に伸びることはあっても、木のてっぺんは真っ直ぐに

上を目指し伸びている。



いろいろな方角から吹く風に葉っぱが揺らぐことはあっても、それを糧として木の幹は真っ直ぐ

真っ直ぐ伸びていき、その根っこは深く深くその根を張っていく。



そんなことをもこの文献を通して教えられたような気がします。



☆☆☆☆



瀬戸内寂聴さんの言葉



私は思うんですけど、被災された方々にはもう言葉もないですよ、お気の毒で。



自分が悪いことをしたわけでもないのに天災に遭ったり、それに続いて放射線の被害に

遭ったり。



でもね、今の状態が決していつまでも続くわけではないから、生々流転、移り変わるという

ことが世の常なんです。



だからどうか気をおとさないで、絶望しないで、どんなことがあっても生きようとしてください。



どうぞ元気でいてくださいとお願いするしかないですね。



そして私たち被災しなかった人間は、あなた方が身代わりになってくださったと思って、

いつも忘れてはいけません。



非力だけど私たちもできることはなにかということを考えますから、どうぞ今しばらく辛抱

してくださいと申し上げたいです。



東北の人たちはほんとうに我慢強い。



でもどうかもう我慢でずに逆にどんどん要求してください。



そうしないと、内に思いが籠もると鬱になってしまいますからね。



どしどし発言してください。



そして一日に一度は、何か笑える事柄を見つけてください。



なかなかそれどころじゃないとは思いますけど、赤ん坊の顔を見たら自然に微笑み

たくなるでしょう。



そして春になれば被災地にも花が咲くことでしょう。



可憐な花のたくましい命を見つめて頬をゆるめてください。



私たちは一日じゅう、夜寝るときもあなたたちのことを忘れていませんから、どうか

気を落とさずに希望を捨てないようお願いします。



「生ききる」より引用



☆☆☆☆




(K.K)









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