
「精霊と魔法使い」アメリカ・インディアンの民話
マーガレット・コンプトン再話 ローレンス・ビヨルクンド絵
渡辺茂男訳 国土社 より引用

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本書 はじめに より引 である。したがって、物語は、多くのインディアン部族が、居留地に強制移住させ られたり、あるいは、編集者の意図により、「翻案」されたりする以前に、語り伝 えられたままのものである。1895年初版の本書は、1870年代と1880年代に アメリカ・インディアンの風俗習慣を調査した政府派遣の調査研究者たちによる 記録に基づいたものである。物語は、中西部の大草原、太平洋沿岸、ニューイ ングランドの山岳地、その他の平原やいろいろな川の流域の村々やキャンプ地 で、さまざまな部族の語り部たちによって語られたものである。すべての国、ま た、ほとんどすべての人種は、それぞれの神話、民話、フェアリー・テールをもっ ている。これら物語類の基本的なテーマ群には、おどろくべき類似性があり、登 場人物たちの間には、名前の変化と地理的背景や、自然の境界の影響による わずかな相違があるのみである。広大な海によって、他の人種から隔離された アメリカ・インディアンの間に伝わる物語が、北欧の神話や、ヨーロッパ中部の 昔話や、アジアや太平洋に散在する島々の空想物語と、かぎりない共通性をも つことは、わたしにとっては、興味のつきないことである。イングランドの小妖精 たちの特徴は、インディアンの「小人たち」に見いだせるし、ヴァイキングの神々 の巨大な所業は、インディアンのマニトゥーとよばれる神々の、神秘な力と似か よっている。火、水、空、風は、かけはなれた世界じゅうの国々の神話で、相似 の役割をもつ。古いアジアの竜は、アメリカに同類がいるし、素朴な人々が語る 物語の中で、動物たちが人間そっくりにふるまうのも、世界共通である。記憶の かなたにある太古、大陸がわき腹を接し、東と西を陸橋がつないでいたころに は、もしかしたら、すべての人類の先祖一族が、太古の樹の木陰にすわり、空 想物語を、とめどもなく創りあっていたかもしれない。太古の創り話から織りなさ れた物語が綾をなし、諸大陸を語り伝えられて、アメリカ・インディアンのウィグ ワムにまではこばれたかもしれない。 ローレンス・F・ビヨルクンド
はじめに 日本語版刊行によせて インディアンの語り部 1 「ゆきほおじろ」と水虎 2 「コヨーテ」または「草原のおおかみ」 3 「荒くれバッファロー」はどのように雷鳥と戦ったか 4 赤い鳥 5 たわんだ岩 6 なまけものの「白いたか」 7 魔法の羽根 8 星のおとめ 9 巨頭 10 戦う野うさぎ 11 「生ある像」のぼうけん 12 「きじばと」と「らいちょう」と魔女 13 がい骨島 14 「石のシャツ」と「一・二」 15 偉大な魔法使いの「もつれ髪」 16 白雲と太陽の王子 訳者あとがき
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