「ネイティブ・アメリカン(インディアン) 聖なる言葉」

宇宙の響きを聴け

ブラックフルフ・ジョーンズ&ジーナ・ジョーンズ著

加藤諦三 訳・解説 大和書房 より






オジウェー族の血をひき、ブラックウルフというインディアン名をもつ著者は

かつて自己基盤を喪失しアルコール依存症になったが、風の精霊により

自分を取り戻す。この帰還に強く影響を与えたインディアンの癒しの技術

の手法と哲学が素朴な詩の中で語られ、現代の多くの悩める魂をあるべ

き場所へと導いてくれる文献である。

(K.K)


 




ロバート・ジョーンズ Robert Jones

オジブウェー族の血をひき、ムカ・デイ・ウェイ・メン・ガン、英語名ブラックウルフの

インディアン名をもつ。1977年アルコール中毒者更正会の協力で断酒を実現した

後、心理学の学士号を取得し、大学院では中毒障害の研究を修めた。サイコセラ

ピスト、中毒症専門家の資格をもち、個人診療所を開業するかたわら、サイコセラ

ピーの過程にネイティブ・アメリカンの癒しの技術を取り入れる手法を全米に説い

ている。(本書より)


ジーナ・ジョーンズ Gina Jones

モホーク族の血をひく。科学教育の学士号をもち、ウィスコンシン州の教育者を

対象にした読み書きのワークショップで現職教育を担当している。(本書より)


 
 


本書より引用


そこにたどりつこうとあせってはいけない。

「そこ」など、どこにもないのだから。


本当にあるのは「ここ」だけ。

今という時にとどまれ。

体験をいつくしめ。

一瞬一瞬の不思議に集中せよ。

 

それは美しい風景の中を旅するようなもの。

日没ばかり求めていては

夜明けを見逃す。







メディシン・マン<呪術医>は言う。

「恐怖そのものに傷つけられることなどあるものか?

あなたが恐怖に動かされなければ

恐怖はあなたを傷つけることはできないのだ。

みずから恐怖にのみこまれてしまったら

恐怖があなたの主人になる」


あなたが恐怖を支配するか

恐怖があなたを支配するか

いずれにしてもどちらかが主人になる。







ナヴァホ族の者は言う、

「あるがままに」

スー族の太陽の踊り手は言う、

「ホー・ヘカトゥ。エロ (それがそのありようなのだ)」


あなたの関わりを受け入れよ、それがそのありようなのだから。

あなたの関わりを抱け。

あなたの関わりと手をとれ。

それがそのありようなのだから。


宇宙は木、我々はその枝。

兄弟に木陰を与え、

一緒に太陽の光に腕を差しのべよう。

それがそのありようなのだ。







あなたが本来の自分であること。

宇宙に対して

あなたにはそうある責任がある。


自分の本当の姿を思って

あなたがぞっと身震いするなら、

身震いすればよい!

あなたは壊れやしない。

怖れずにはばたけ、

自分自身になれ!







子供たちは

私たちの未来を織る糸。

彼らを敬え。

彼らを傷つけるようなことを

してはならない。


万物の子供と調和して生きるなら、

空は澄みわたり、大地は揺るぎない。

万物は満足し、栄え、

聖なる環はよみがえる。

内なる子供が虐げられると、

空は濁り、大地は不毛になる。

バランスは失われ、

生きものは永久に消え去る。


あなたの最大の宝は内なる子供だ。

年をとっても、

その子供を育み続けなさい。

この子供は永遠にあなたの一部。

内なる子供はあなたに

あなたが願ってやまない自由を、

あなたが欲する自発性を、

あなたが求める驚きを、与えてくれる。

これらが必要になったら、東の方角へ行きなさい。

あなたの内なる子供とずっとつながっていなさい。


子供の目でものを見よ、

そうすれば人生の魅力がわかる。


子供たちは私たちの富。

いろんな角度から子供たちを眺めてごらんなさい、

美しい石をあちこちから眺めてみるように。

彼らに子供でいる自由を許しておやりなさい、

なおかつ彼らを制限と境界線で祝福しておやりなさい。

それが彼らの殻を育てるのだから。


 


本書 訳者まえがき 加藤諦三 より引用


悩みのある人は、表面的な生き方の中で自分から悩みをつくっている。ちょっとした

ことに気がつくことで、悩みが解決することもある。悩んでいる人は、そのちょっとし

たことに気がつかないで生きていることが多い。この本は、そのことを教えてくれる。

自分のしていることを見つめ、そして自然が語ることに耳を傾けよう。そう、この本は

説いている。なぜなら、人間の悩みの答えは自然が出してくれるから。人間の悩みの

答えは森羅万象が教えてくれる。だから、自然に耳を傾け、その鼓動を聴こう。そう、

この本は説いている。ネイティブ・アメリカンは小さな花にも、空飛ぶ鳥にも、木にも、

草にも、光にも教えを請おうとしている。たとえば、林檎は熟して落ちる。時期が来れ

ば物事は成就することを、林檎の木は教えてくれる。変化を恐れてはいけないことも、

教えてくれる。人は四季の変化の中で生きている。小川もやがては激流になる。この

本には悩みや苦しみに対処する時の考え方が書かれている。それはネイティブ・アメ

リカンの生きる知恵である。人間は、嬉しさいっぱいだけでは、生きてはいけない。

それが生きることの原点である。生きていくうえで寂しさや苦しみはいつもつきまとう。

でも、苦しさも、寂しさも、生きている証なのである。不安、苦しさ、寂しさなどを抱え込

んでごらんと、ネイティブ・アメリカンは言っている。生きていくうえで嫌なことは誰にで

もたくさんある。「嫌だなぁー」と思うことは誰にでもある。しかし、それも生きている証

である。苦しみも、悩みも、背負わなくては人は生きていけない。月のやすらぎがなけ

れば、太陽のよさも分からない。太陽がギラギラと輝いて暑いなと感じる人もいれば、

ポカポカと暖めてくれると感じる人もいる。それはその人の心が決める。この本に書か

れている詩は断片的なことのように思えるが、多くの詩が一つにつながっている。つま

り、悩んだ時には止まれ、と言っている。このような本を急いでどんどん読み進むこと

はない。一日に一項でもいい。味わって読むことである。(本書・「この本を手にとった

あなたへ」 








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