
「森林インディアン イロクォイ族の闘い」
エドマンド・ウィルソン著
村山優子訳 思索社 1991年発行 より引用
本書はエドモンド・ウィルソン著の全訳で、原著は著者緒言にも述べられている
ように、かつて「ニューヨーカー」に数回にわたり掲載されたものに若干の修正を
加えて単行本として刊行されたものである。内容は一見イロクォイ族の現状のル
ポルタージュという形式をとっているが、単に事実の記録と報告にとどまらず、著
者の一貫した産業文明に対する鋭い批判と人間へのたゆまぬ関心が文明および
文明社会を無批判に賛美する人々に対して挑戦的とも言える姿勢で問題を突き
つけているという点が、本書の高く評価される所以であろう。また最初の部分に、
これも「ニューヨーカー」に既に掲載されたジョーゼフ・ミッチェルの短いがすぐれた
モホーク族の報告を収録してあるが、これも現代文明へ適応してゆこうとする努
力と伝統的文化への断ち難い思いの間で揺れ動き、さまよう現代のインディアン
の姿を真摯に、また温かい共感をもって描写しており、それを併せて読者に呈示
することによって現代文明に対する疑問を投げかけている。(中略) 著者が、本
書を著すに至った最初の動機は、このニューヨーク州の先住民イロクォイ族の
土地係争問題への関心であった。そして直ちに、イロクォイ族が<州あるいは
連邦>政府の不正義の犠牲になっていることを悟り、彼の知的好奇心と正義
感をこの問題に捧げたのである。本書の中でイロクォイ族の各保留地における
土地係争問題の経過が非凡な冷静さと明敏さをもって記述されている。しかし
本書の内容を非常に豊かにし、かつ奥深くしているのは、単に土地問題を中心
とする人種・民族間抗争という視点にとどまらず、近代文明対伝統的文化、国家
(ないし州)権力対市民の権利という視点に立ってこの問題を把握しようとしたこと
である。
(本書 訳者あとがき より引用)
