
「アザラシとくらした少年」
レイフ・マーティン作 デイヴィッド・シャノン絵
常盤新平訳 岩崎書店 より引用





アメリカ北西岸に住んでいたチヌーク族の民話を基にして書かれた絵本
ですが、「昔人間と動物は同じ言葉で話していた」という世界各地に残さ
れている先住民の世界観を、実に感動的な挿絵と共に雄弁に語りあげ
ている傑作だと思います。特に最後の挿絵には心が慰められます。
(K.K)
この物語、「アザラシとくらした少年」は、アメリカ合衆国の北西岸にすんでいた
チヌーク族というインディアンの、ごく短い民話をもとにしています。数千年もの
あいだ、チヌーク族は、コロンビア河(この物語の“大きな川”)の河口やその
内陸沿岸で、平和にくらしていました。魚つりをしたり、岩に彫りものをしたり、
ものを交換しあったり、美しいかごをあんだり、すばらしい物語を語りついだり
して、くらしていたのです。また、季節ごとに旅をして、狩りやキャンプや植物
の根を集めるのに適した、とっておきの土地を訪れてもいました。ごく最近に
なって、コロンビア河流域にはダムがつくられ、チヌーク族の村も、つり場も、
岩の彫刻も、みんな水の底にしずんでしまいました。そして部族はどんどん内
陸へと追いやられていきました。チヌーク族は現在、デシュート川沿岸にす
む、南部連合国のウォーム・スプリング族の一派となって、ウォーム・スプリ
ング保留地でくらしています。けれども、世界中の伝統を重んじる民族とおな
じように、チヌーク族も、自分たちのことは、自分たちのことばで、ただ、「一
族」とよんでいます。この一族は、すべての生命にやどる聖なるものを、深く
理解しています。生命と活力と精神をもつ、自然の大いなる宝庫から、人は
際限なく取ってばかりいてはいけないこと、取ったらちゃんとお返しの贈り物
をしなければならないこと、そして、この贈り物から、新たな生命をもった新し
い贈り物が育つということを、よく知っているのです。この物語、「アザラシとく
らした少年」は、この心の広い一族からの贈り物です。・・・・
作者(レイフ・マーティン)の言葉から引用
