Black Hills Day Off - Robert - Picasa ウェブ アルバム  より画像引用(ブラック・ヒルズ、ラシュモア山)


大統領の彫刻(アメリカ合衆国建国から150年間の歴史に名を残す四人の大統領、

ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、セオドア・ルーズベルトとエイブラハ

ム・リンカーン)が彫られたブラック・ヒルズにあるラシュモア山。奴隷解放の父と呼

ばれたエイブラハム・リンカーンは、インディアンに対しては常に徹底排除の姿勢を

崩さず、大量虐殺の指揮を取り続けた。1971年、ラッセル・ミーンズら「アメリカイン

ディアン運動(AIM)」の運動家と支援白人たちが大統領像の頂上に登り、ララミー

条約の有効とこの山の占有権の確認を求め座り込みを行った。その際、彼らはジョ

ージ・ワシントンの頭の上に小便をかけてみせた。


 


アメリカ・インディアンの言葉




ラコタ族の創世神話

NHKカルチャーラジオ 歴史再発見 

「アメリカ先住民から学ぶ―その歴史と思想」阿部珠理著 

NHK出版より引用


数えられないほど、たくさんの冬のむかし、限りのない闇が広がり、その闇の中に、始源の

存在、イヤンがあった。イヤンは非常に柔らかく、彼の力は、彼の青い血液をくまなく巡って

いた。イヤンをかくあらしめた偉大な魂が、ワカンタンカである。イヤンは、たいへん力ある

存在であったが、常に一人でいるのが寂しくなり、身を揺すって、マカ(大地)を生んだ。



それから自らの血管を開いて、青い地を大地に流して、それがムニ(水)となった。ムニは

流れて川となり、溜まって海となった。イヤンは、ムニから青い色を取り出し、上方に投げ

た。すると、マピア(空)が出来た。こうしてイヤンは、自分のあらかたを与え尽くし、縮んで

石となった。



イヤンに宿るワカンタンカの、聖なる偉大な力を分け与えられたマカ(大地)とムニ(水)と

マピア(空)は、互いの力を出し合って、光を作った。しかし光に熱はなく、マカが寒がるの

で、協力してウィ(太陽)を生んだ。



マカは、自分が裸のままであったので、自分を覆うさまざまなものを生んだ。育つもの(植

物)を生み、地を這うもの、翼をもつもの、四本足で動くもの、二本足で動くものを誕生させ

た。二本足で動くものは熊で、彼に智恵を与え、その象徴とした。マカはそれから、女と男

を創造し、彼らに物事を判断する能力を与えた。



しばらくの間、マカの上で、生きとし生けるものは、互いを尊重しあい、仲良く暮らしていた。

ところが二本足の人間たちが、だんだん欲張りとなり、自然の規則をやぶって、幸せに暮ら

している皆の調和を乱すようになった。マカは、人間の行いを見るにつけ、悲しくなり、大い

に落胆した。彼女は、彼女が生んだ子どもたちに、彼女の懐に戻るよう、呼びかけた。そこ

がマカの心臓・ブラック・ヒルズである。



しかし多くのものは、彼女のメッセージを理解せず、そこにやってきたものは少なかった。

マカは心臓を開いて、それらのものを、身の内にかくまった。それからマカが身を揺すると、

大地は割れ、大洪水が起こり、多くのものたちが飲み込まれ、押し流された。マカはこうし

て、自らを浄化した。



それから静寂が訪れ、ブラック・ヒルズだけが、静寂の中に変わらず、そびえていた。世界

に静寂が戻ると、マカは、ブラック・ヒルズの口から、かくまっていたものたちを、吐き出した。

再び地上での生活が、始まった。ある日、カササギが小さな茂みに降り立つと、四本足のも

のと、這うもの、植物たちが、茂みの向こうで何かを相談していた。その中のバッファロー

が、洪水が二本足のわがままでおきたことをあげ、調和をみだす彼らを追放することを訴え

た。皆はバッファローに賛同し、さっそく、二本足を追放する方法を相談し始めた。カササギ

は、皆に気付かれないよう、そっとそこを飛び立った。



カササギは戻るとすぐ、翼あるものたちを召集して、彼がいましがた聞いてきたことを、みな

つ伝えた。四本足たちの意見に賛同するものは多かったが、それまで黙って聞いていたフク

ロウが、二本足を追放すると知恵の象徴であるクマを永遠に失うことを指摘した。翼あるもの

たちは、みなフクロウの意見に従うことにした。



二本足の処遇は競争で決することにした。二本足以外のものたちで、一番早くマカの心臓、

ブラック・ヒルズを、四周したものの意見が採用されることになった。



レースは、過酷だった。四本足の蹄は割れ、地面に血の跡を残した。皆の駆け足が、大きな

轟きとなって、大地を揺らしたせいで、三周目が始める頃、ブラック・ヒルズの背後に、瘤のよ

うにぽっこり大地が盛り上がった。四周目に差しかかったときには、すでに多くのものが、脱落

していた。



決勝点が、近づいた。先頭を走っているのは、バッファローだった。カササギは最後の力を

振り絞ってバッファローの背中に飛び乗った。そして、ゴールの瞬間に飛び出して、勝利を

収めた。



カササギのおかげで、二本足の人間がこうしてこの世に居られることになった。レースの後、

皆は轟きのため、盛り上がった場所に出かけて、表面を剥がすと、イヤン(原初の石)が出て

きた。その場所を彼らは、熊の特別の住処にすることを決めた。そのために戦った智恵の

価値を、それを見上げるたびに、思い出すように。



マカは、彼女の子どもたちが払った犠牲を人間が忘れないよう、またこの世で暮らし続けるこ

とを許してくれた。生きとし生けるものに対する感謝と責任を、つねに覚えているように、血に

染まった大地を、そのまま残しておくことにした。



「熊の特別な住処」は、マト・ティーピィー(ベア・ビュート)である。そこは、ラコタの人々がハン

ブレチア(ヴィジョン・クエスト=自分の進むべき道を求める旅)に出かける聖なる山だ。ブラッ

ク・ヒルズの土は、生きものたちが流した血のように今でも赤い。


 


ラコタ思想

NHKカルチャーラジオ 歴史再発見 

「アメリカ先住民から学ぶ―その歴史と思想」阿部珠理著 

NHK出版より抜粋引用




神話が伝えようとするラコタの思想を集約すれば「繋がり」「循環」「調和」になるだろう。

すべての創造は、イヤンに宿るワカンタンカから発し、生まれたものには、すべてワカン

タンカが宿っている。(中略) 上記の神話でいえば、知恵の動物クマのメディスンは「知

恵」、フクロウのメディスンは「沈思」、人間のメディスンは「判断」である。これらのメディ

スンは相互補完的な関係にあり、なにが欠けても自然の調和に異変が生じる。ちょうど

生命連鎖の環の中で、一つの種が絶滅すると他の種の生存が難しくなるのと同様だ。

(中略) ラコタでは、すべてのものは円環状に繋がっていると考えられており、これを

「聖なる輪」と読んでいる。(中略) 元来モノを蓄積しない移動の民は、必要なものは自

然から貰い、また自然に返す循環のリズムを刻んで生きてきた。現在でも行なわれてい

るギヴ・アウェイ(与え尽し)は、モノをそれを必要とする人のもとに巡らすシステムだった

と考えてもよい。(中略) ラコタの思想は自然と不即不離の関係にあり、所与の物理環

境によって彫琢された。自分と他のあらゆる存在を含む自然との交通・・・・繋がりと循環

・・・に形を与え実践することで、思想を実体化してきた。その意味で「生きられる思想」の

性格を強く持つ。









アメリカ・インディアン(アメリカ先住民)の言葉(第一集)

アメリカ・インディアン(アメリカ先住民)の言葉(第二集)

アメリカ・インディアンの言葉(第三集)

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