「春の星座博物館」

山田卓 著 地人書館


 






私は数多くの天文書の中で、山田卓さんの著作が一番好きだ。何故なら他の天文書

では感じられない、著者の想いや人間性が見えてくるからだ。既成事実だけを淡々と

書いている天文書が多い昨今において、山田さんのような遊び心のある、ユーモアに

あふれた文章に接すると心が和んでいく。人生経験を多く積んだ者しか語れないもの

がそこに横たわっている。

(K.K)


「夏の星座博物館」 山田卓 著 地人書館

「秋の星座博物館」 山田卓 著 地人書館

「冬の星座博物館」 山田卓 著 地人書館





本書 まえがき より引用

星はいい友



この本は、この本を手にしたあなたに、自分の星をみつけてもらおうともくろんだ本である。

だから、この本を手にしたあなたが、その気になって夜空をあおいでくれたら、この本のもく

ろみは達成され、著者は大満足。いい星がみつかるかどうかは、あなたしだい、というわけ

である。



この広い宇宙のかなたに、親しい友をみつけることはわるくない。そのことが楽しいだけで

はない。夜空の友は、ときには恋人となってあなたの心を焼きこがし、ときには師となって、

この広い宇宙のなかでの人間の立場を考えさせてくれる。



それはあなたがいかに生きるかをきめる。あなたの人生哲学の形成に、大いにいい影響を

もたらすにちがいない。人は日ごろ、つい自分の手が届くせまい世界で生きがいをさがしもと

めてしまう。せまい世界に生きるものには、常にゆきづまりと絶望がたちふさがる。



人間が生きる宇宙は途方もなく大きく広い。それにくらべたら人の一生は瞬間といえるほど

短い。ゆき詰まりとか絶望がたちふさがるなど、とうてい考えられない広大な宇宙で、それ

ほど長くもない人生を、ありもしない絶望と失意でおくる手はないのに・・・・。



いい星の友がそれを教えてくれる。星との友好関係を深めるために、星のことをより多く、

より深く知ることは大切である。しかし、それがせまい世界で尊敬を獲得するための知識で

あったり、ライバルの足をひっぱる武器とするためであってはならない。その人の宇宙は、

豊富な知識とは裏腹に、ますます小さく狭くなる。そういう人にとって、星はいい友にならない

からだ。



出会いは大切にしたい。星との出会いもまた同じである。この本が星に出会うきっかけになれ

ば幸いである。簡単なことだ。まず名前を知って、胸をときめかせて今夜の出会いを待てばい

い。いい出会いをして、その星のことなら、なんでもいいからもっと知りたいと思うようになったら

本物である。



星があなたのいい共になるか、ならないか、それはあなたの心しだいだ。あとは、あなたの肉眼

と、できれば小型の双眼鏡1台あればいい。




 
 

本書 あとがき より引用

再会の楽しみ



道ばたのどこにでもころがっている石っころのように、あなたにとってなんでもなかったただの星

が、いや石っころよりもっと途方もなく遠くにあって、まったく自分とは無縁な別世界のものであっ

た星が、ある日突然、その星の名前を知っただけなのに、親しい友か恋人のように身近にやって

くる。



なんどもその星に出会ううちに、星はあなたの心をとらえてしまう。いままで、星はどれも同じ顔に

みえたのに、ちゃんと見わけがつくようになる。しばらく顔をみせなかった星を、ひさかたぶりに、東

の地平線の上にみつけたとき、なつかしさのあまりおもわず声をあげてしまう。



一年ぶりの再会に興奮して、誰かれとなくこの心のたかぶりを知らせたいとおもう。毎年の再会は、

いつも新鮮で季節の移り変わりが喜びとなる。ある日、夜明け前の空に、季節はずれの友を発見す

ることもある。おもわぬ出会いは、あなたをひどく驚かせ、感動させるにちがいない。



あなたにとって路傍の石にすぎなかった星を、いつのまにか、あなたは宝石にかえてしまったのだ。






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