「アメリカ・インディアンの神話と伝説」

エラ・イ・クラーク著 山下欣一訳 岩崎美術社 より




先住民独自の世界観であるアニミズムやシャーマニズムそのものを映し出して

いる彼らの神話と伝説。それらの世界に触れると全ての生命が輪となり回り

続けていることを感じられてならない。これはアイヌ民族の民話集「炎の馬」

おいても表わされている。このような神話や伝説を火を囲みながら聴き入った

人たちの時間のゆっくりとした流れとそのあるべき自然のリズム、そしてこの中

にこそ真の教育と呼べるものが横たわっているのではないだろうか。本書より

もインディアン各部族の神話・伝説を幅広く収集したものに「アメリカ先住民の

神話伝説 上下巻」がある。

(K.K)

「インディアンの源流であるアニミズムとシャーマニズム」1997/7/25 を参照されたし。





山・湖・河・滝にまつわる伝説や創世神話など素朴な62話を通して、北西部イン

ディアン各部族の独自の世界観や、アニミズムがうかがえる。(本書帯文より)


 
 
 


何故にそして何時民話は話されるのか (本書第四節より)


スノホミッシュ民話の小さい本の中でウィリアム・シェルトン酋長は、自分の家族に話をする

目的の一つとしてこのことを話している。「私の両親、叔父たち、大叔父たちは、勇敢で善良

で強くなるための望みと良い話し手、よい指導者になることを私の心の中で起す昔の物語を

私に話した。彼等は、老年の人々をほめたたえることと、そしていつも彼等を助けるために

自分の全力をつくすことを私に教えた」 そして古いインディアンの物を教える方法は、物語

を通して教えることであったと付け加えている。シェルトン酋長の物語の一つは、「空を押し

上げること」で人々が一緒に働けばすることができることを説明している。彼の家庭における

民話の中で指摘している他の教訓には、次のようなものがある。「自慢しては、いけない。

また鹿がしたように悲しむかも知れない」「いつも狐があざらしをだましたような方法でずるい

人々があなたをだますのを用心しなさい」「あなたが若いということで老人たちを見下しては、

いけない」「いつも貧しい人に親切であれば、それであなたは、いつも幸運だろう」「その人が

良くないと知っていたら誰とも外に出ていってはいけない。あなたが何を知っていなくても、

ちょうどミンクが弟をもめごとにまきこんだように、もめごとにあなたをまきこむだろう」「欲ば

っては、いけない」「無駄使いをしては、いけない」などは、現在収集されている物語の中で

の明らかな教訓である。ウマティラ保護地におけるオティス・ハーフ・ムーンの思い出では、

インディアンの話し方に別の教育的目的があるともらしている。彼の子供の時代にすごした

ネツ・プルス・インディアンの部落では、少年たちのためと少女たちのものとして特に冬の

小屋が作られていて、熱くなった岩が一日中小屋を暖めていた。良い話者であるということ

で尊敬されている人々のうち、一人の男が少年たちのところに、一人の婦人が少女たちの

ところにきて、彼等の戸外生活に必要とする知識を子供たちに教えるのであった。ハーフ・

ムーン氏は、主として、動物の話と星の神話と他の種類の部族の伝承を思い出している。

ネツ・プルス神話の教訓的価値の一例は、「ビーバーとグランド・ロンド河」の頭注に書いて

あるものである。二十五年間もコルビル保護地に住んでいて教育のある白人の婦人は、

多くの物語が近隣の人々によって、「歴史学、地理学、自然の研究、倫理学の書かれざる

テキスト」、として話されていたのであると言っている。彼女の近くのいくらかの家庭では、

外で遊ぶのが寒すぎる冬の朝早く祖父や祖母が子供たちを周囲に集めて、部族の民話を

通して彼等に教えるのであった。クララ・ムーア夫人の叔母さんは、娘たちが皮をなめしじゅ

ず玉の仕事をしている間、娘たちをたのしませ、教えることで娘たちへ古い物語を話すこと

をしていた。彼女の祖父や叔父たちは、同じように少年たちが魚つりや狩りのための用具

をつくることを学んでいる間、たのしませたり、教えたりしていた。


 


目次

序文・・・・山の峰々からインディアンの神話へ

第一節 山々の神話

第二節 湖の伝説

第三節 河・岩と滝の民話

第四節 創世・空と嵐の神話

第五節 その他の神話と伝説

語彙解説

あとがき








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