おわりに　（本書より引用）

文豪ゲーテを読まないドイツ人は大勢いますが、ラスカーの棋譜を読まないドイツ人は

いないでしょう。ロシアではチェーホフの詩を知らない学生はいても、アリョーヒンの“名

局棋譜集”を自分でチェス盤上に並べて鑑賞したことのない学生はチェスを指さない人

も一人もいないといわれています。外国人に、ケネディとかゴルバチョフとかいっても、

ほとんど反応しませんが、フィッシャー（アメリカの天才棋士、彗星のごとく消え去った）

やカスパロフを話題にすると、チェスを趣味にしない人でも、とたんに目を輝かせます。

チェスは世界中まったく共通のルールを持つスポーツです。そして、戸外、室内のあら

ゆるスポーツを通じて最多数の競技人口を誇ります。オランダのことわざに“棋士は一

家族に一人で充分だ”というのがあります。世界チャンピオン、エイベ博士を生んだこの

国では、国民の９２％がチェスの“妙手”を鑑賞できるといいます。残りの８％は幼稚園に

入園する前の乳児でしょう。チェスを楽しむには、競技会に参加することです。友人を作り、

日本チャンピオンを目ざし、国際大会に出場し、そして、世界チャンピオンとなって賞金１５

億円を目ざす。今日始めた皆さんのチェスは、そのまま世界の最高峰につながっているの

です。日本チェス協会（JCA）に入会しましょう。JCAは日本のチェスを代表する唯一の

組織です。

1995年3月24〜25日　ジュニア選手権（蒲田チェスセンターにて）　
渡井美代子（Watai Miyoko）さん
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