Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)


心に響く言葉

2003.8.3





ホピの少女ナタリー(10歳)の言葉 1975年

「子どもの神秘生活」生と死・神・宇宙をめぐる証言より引用


空がわたしたちのことを見ていて、わたしたちの言うことを聞いてくれる。

空はわたしたちに話しかける。そしてわたしたちの返事を待っているの。

空には白人の神様が住んでいるって先生が言っていた。あなたたちの神

様はどこに住んでいるのでしょうって先生が聞くから、わたしは知りません

って答えた。だって本当に知らないんだもの! わたしたちの神様は空。

だから空のあるところには必ずいる。太陽も月もわたしたちの神様。それ

にホピ族の人たちも。わたしたちはここに住んでいなければならないの。

ここからはなれたら、神様もきえてしまうから。(中略) でも、白人はわた

したちの言うことに耳をかさない、自分たちの言うことしか耳に入らないっ

て、四六時中白人とつきあっているお父さんが言ってた(父親はトラックの

運転手であった)。おばあちゃんはね、白人は空をせいふくしようとしてい

るけど、わたしたちは空に祈りをささげるために生きているって。せいふく

しようとする人に話してもむだだから、白人の分もいのるしかないって。

だからわたしたちはただニヤニヤして白人に《イエス》ばかり言うのよ。

そしてあの人たちのためにいのるだけ」





ブラッキー(少女の愛犬)と散歩していたとき、空にけむりのすじを見たの。

ひこうき雲。いったいだれがのっているのかなって思った。わたし、ひこう場に

行ったことないんだ。学校で写真は見せてもらったことはあるけど。ブラッキー

と二人でひこうきにのっているところをそうぞうした、太陽にむかってどんどん

とぶところをね! そんなことしたらひこうきがとけちゃうって知っているよ。

太陽に近づくと、なんだってとけちゃうって学校で習ったもの。でもたましいま

ではとかせないよ! わたしたちはお日様やお星様に手をふるんだ。光を

おくってありがとうって。ずっとずっと前のおくりものを、いまわたしたちがうけ

とっているんだよね。わたしって空想するのがとくいなんだ! ホピ族のご

先祖様たちに会って、先のことを話したい。みんながまたいっしょになれる

ときのことを。川には水がたっぷり流れていて、お日様が地球のさむいとこ

ろをあたためて、すっごくあついところは少しのあいだあまりてりつけないよう

にする。そして世界の人が大きな輪にすわる。みんな、きょうだいってわけ! 

そのとき世界中の霊が出てきておどりくるう。星もお日様も月もよ。鳥たちも

地面にまい下りておどる。人間たちがそこらじゅうでおどったり、またすわって

輪をつくったり。輪はすっごく大きいから、メサの上に立って地平線のほうを

見ても、どこまでつづいているかわからない。でもみんなうれしそう。けんか

なんかしない。けんかするのは、まいごになって、先祖のことをわすれて、

わることをしでかすから。いつか、みんなが大きい輪になって手をつなげる

ときがくる。ホピ族だけじゃなくて、みんなよ。そうなったらほんとうに《いい》

んだよね。先生が良いこと、良いものの例をあげなさいって言ったことがあ

るの。ブラッキーはいいよ。だってだれもきずつけないもん。この世界もみん

なが大きな輪をつくれるようになったらいいね。ぐるぐる回りながら、世界中

の人がその輪に入ってきたらさ」


 


ホピの予言で知られるインディアンのホピ族の少女(10歳)の言葉を紹介したいと

思う。この言葉が記録されたのが1975年というからそれ程遠い昔の話ではない。

ホピに限らず、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの地に生きる少年少女から、

生と死・神・宇宙に関しての証言を集めた文献から抜粋したものである。この少女

ナタリーは長女で、妹が二人、弟が一人いたが、学校の成績は平均的で学校関係

者によれば、ときに「ふさぎこむ」ことがあったという。また学校の看護婦によると、

「典型的なホピ族の少女で、どちらかというと白人の社会よりホピ族の習慣に親しん

でいた」という(これらの事実は本書より要約)。しかし、彼女の視点は遥か昔から

の彼らの祖先の道をしっかりと見据えており、その言葉は単純そのものであるが故

に心に響いてやまない。白人化の波はここホピ族でも例外なく襲ってきたし、多くの

ホピ族が伝統的な生活や、命をかけて守ってきた生き方を捨てていた。しかしまだ

希望が残されていることを、彼女は私に教えてくれた。そして許し、祈ることをも。

ありがとう、ナタリー。

(K.K)


 


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