
「大地に抱かれて」
リンダ・ホーガン著
浅見淳子訳 青山出版社より

本書「はじめに」より
ネイティブ・アメリカンの女として、私は問いかけたい。
私たちはこの星の未来に、どのような責任を持っているのだろうか。
この星を分かち合うほかの命たちに、どのような責任を持っているのだろうか。
この本に収められているエッセイは、こうした問いかけから生まれた。
人間であることの意味を、探ることから生まれた。
大地とそこに生きる命たちへの、絶えることのない愛から生まれた。
この世には人間の知性を超えた叡智がたしかに存在する。
その崇高なありようを、人間の限られた力でとらえることはできない。
世界にはふたつの知識体系がある。
土地に根を張って生きるもののそれと、
土地との絆を失ってしまったもののそれと。
現代に生きる私たちは、大地と、
そしてそこに生きる仲間との約束をすっかり忘れている。
私たちの祖先が、かつて誓っていた約束を。
けれども、心慰められることもある。
ネイティブ・アメリカンの間にも、そうでない人々の間にも、
この約束を思い出そうという動きが見られる。
私が抱き続けてきた生きとし生けるものへの愛が、この作品を生み出した。
この惑星への愛が、この大地の下に何が潜んでいるか知りたいと願う気持ちが、
この作品を生み出した。
それだけではない。この作品ははからずも”違い”に光を当てた。
アメリカ大陸に昔から生きるものとそうでない者の、
考え方の違い、この世界でのあり方の違いに。
この作品はまた、異次元の世界を浮き彫りにする。
異なった知識体系を持つ”神秘”と呼ばれる世界への扉を開ける。
私の部族の祖先たちは、その世界を知っていた。
日々の生活のなかに息づく聖なる領域を、その目でとらえていた。
大地、生きとし生けるもの、そして人間 ・・・・・ 本書「大地に抱かれて」では、
この命に満ちた世界での人間のありようを探ろうとしている。
私は自然界への敬意を持ってこの本を書いた。
人間もまた自然の一部だという信念のもとにこの本を書いた。
この本は、狭い人間の世界を大いなる宇宙と結びつける。
私たちにこの世界での人間の立場と、ものの見方を教えてくれる。
私たちアメリカ原住民が受け継いできた儀式のように。
この本には、自然界からのメッセージが満ちている。
この本との出会いが、より広いものの見方へとつながっていけばいいと願っている。
本書は自然からの贈りもの、自然の語り部なのだ。
深遠なる森が、命を育む大地が、詩となって、言葉となって、ここに結実した。
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リンダ・ホーガン(Linda Hogan)
アメリカ・インディアン、チカソー族の作家。フィクション「
Mean Spirit 」で
オクラホマ・ブック賞受賞。1991年度ピューリッツァー賞の候補作ともなる。
詩集も数多く手がけており、「 Seeing throughthe Sun 」では、アメリカン
ブック賞を受賞。現在、コロラド大学で教鞭をとる。・・・・・・・・・・
詩を朗読する、リンダ・ホーガン
リンダ・ホーガンの言葉「心に響く言葉 1996.12.15」を参照されたし