「楽しいチェス読本」

ロフリン著 日本チェス協会訳編 ベースボール・マガジン社












はじめに 本書より引用

本書は、チェス愛好家のために書かれたもので、チェスの理論や競技方法を組織

だって解説しただけの教科書類とは異なり、もっと幅広く深い味わいをこめて著わ

されたユニークな読本である。著者は、長年にわたる科学的な経験や心理学的

観察、経験豊富なチェス・プレーヤー達との実戦などを踏まえて、何世紀にもわた

るチェス発展の歴史、その技術と理論の解明、チェスの戦略と戦術における様々な

問題、そして著者自身と世界の著名なチェス名人との出会いなどについてできるだ

け簡潔に述べている。本書においては、分析資料の統合やチェスの思考の法則性

研究などには触れられていない。それは別個に大論文のテーマとなってしまうから

である。しかし、探究心ある読者は、試合経験の蓄積やテキストの棋譜研究と分析

などに従って、本書に収録された卓越したチェスゲームの特殊性、チェス盤をはさん

で長時間対戦する名人達が出会う困難などを感じとることができよう。これらの全て

が知識の深化、自己訓練そして将来の技術の進歩のための糧となるに違いない。

19世紀ロシアの評論家チェルヌィシェフスキーは書いている「歴史なくしては、理論

もまたない」と。著者は、本書において興味ある創造的なチェスの歴史と、現在のよ

うに多くの国の人々が参加するようになったチェスの発展過程について多くのページ

をさいている。また、名誉あるチェス・プレーヤー達の功績や、世界チェスチャンピオン

の座をめぐる最強の名人達の激しい戦いのエピソードなども読者の興味をそそらず

にはおかない。





日本語版への序 本書より引用

チェス競技は1千年の歴史を経た現在、既に世界中多くの民族の文化生活のなかに

深く根を下ろしています。特にソビエト連邦におけるチェスの普及は広範なもので、19

77年現在チェス・クラブに所属する会員は300万人に達しています。これ程多くのソ連

人がチェスを学ぶ最大の理由はやはり過去30年間、ソ連のチェス・プレーヤーが世界

の舞台で大活躍をしているからに他なりません。さて現代のチェスはその理論と実戦

において思考の具体的且つ客観的性格の両面を要求しています。すなわちチェスの

試合において競技、スポーツ、芸術、科学的認識等これら全ての要素を統合する能力

が必要とされているということです。1試合に4〜5時間かかるゲームが続く現代の競技

形式では、プレーヤー達が消費する精神的肉体的エネルギーの量は膨大なものです。

そこで言えることはチェス競技が人間の他の創造行為と同一範疇にあるということで

す。世界チェス連盟(FIDE)主催のチェスオリンピックがスタートしてから50年ヨーロッパ

の専門家達は日本のチェス協会の新しい参加に注目しております。入門書と理論書の

出版、名人達の試合紹介 etc・・・・日本でのチェス研究と普及運動は盛んだと聞いて

おります。あとはただ日本のチェス・プレーヤーが現在の方向で真剣に努力を続け

世界の檜舞台で活躍するようになる日を待つだけでしょう。最後に本書が日本のチェス

愛好家諸氏にとって「賢者の競技」を学ぶ一助ともなれば著者には幸甚であります。


ヤーコフ・ロフリン







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