巨大銀河星雲 NGC3603
地球からこの巨大銀河星雲までの距離は約2万光年。そしてこの一枚の画像に星の誕生から死までの
姿が映し出されていると聞いたら皆は驚くかな。でもこの一枚の写真にはその全てが写っているんだよ。
では順番に星の誕生からその最後まで見ていこうね。上の画像の右上の角近くの雲の中に三つの黒い
斑点が見えるかな。これはボーク胞子(Bok globules)と呼ばれている暗黒星雲なんだ。この暗黒星雲は
星間物質が星に進化する過程で収縮したもので、星を生む材料のガスや塵が雲のように濃く集まってい
る所だよ。皆はこの暗黒星雲のあるところがぽっかりと穴を開けているように見えると思う。でも実際は
その逆で、濃いガスや塵が暗黒星雲の背後にある明るい星雲の光を遮ってしまっているんだ。画像では
とても小さく見える暗黒星雲だけど、その広がりは小さいものでも0.1光年、大きなものでは100光年
もあるんだよ。そして数千年から数万年後に、このガスと塵の中から星の卵(原始星)が光り出すことに
なるんだ。この原始星という生れたばかりの星が、まわりのガスを輝かせている姿が、画像の真ん中下
のやや左側にあるんだ。おたまじゃくしの形をした二つのオレンジ色の輝線星雲が見えるかな。画像で
は右半分を覆っている大きな星雲の切れ目近くにあるね。この原始星(グロビュール)の降着円盤から
ガスやダストが蒸発することによって、このように輝いていると考えられているんだよ。この原始星はその
後、自分の重力で縮み始めるようになる。そしてその発生した熱はどんどん高くなって、中心部の温度が
1000万℃に達すると核融合反応が起こり、一人前の恒星として輝き始めるんだ。この恒星が成長して
いった姿が、画面中央に青白く輝く星の集まりだよ。スターバースト・クラスターと呼ばれている照明弾
星団で、100個余りのこれらの星はとても若く高温で輝いている。この星団からの電離放射や高速で
流れ出す星間風が、冷たい水素の分子雲と衝突して巨大なガスの柱(シャープな境界で明るく光ってい
る領域)をつくっているんだ。この巨大なガスの柱として有名なのが、わし星雲として知られるM16なん
だね。このスターバースト・クラスターの左上に輝く青白いガス雲が三つ見えるかな。その真ん中の奇麗
な形をしたリング状のガス雲の中に、明るく輝いている星がある。これがSher 25と呼ばれている青色
超巨星なんだ。実はこの星は、進化の最終段階(超新星爆発)にさしかかっているんだよ。灰色や青色
をしたリング、そしてこれに垂直な方向に吹き出している双極流(星の右上、左下に見える二つのガス
塊)は、この星が近いうちに超新星爆発を起こすことを物語っているんだ。そしてこの超新星爆発によ
り、大きな分子雲が乱され分裂を繰返しながら濃いガスの塊となってゆく。これが最初に見たボーク
胞子(Bok globules)と呼ばれている暗黒星雲なんだね。このように星の誕生と死は繋がって循環して
いるんだ。超新星爆発という星の死がすべての終わりではなく、そこから新たな物語が始まっていく。
ひょっとしたら、人間の一生も星のように循環しているものかも知れないね。散文詩「時の彼方へ」に
も、そのことへの想いを書いているから参考にしてください。
