「大地にしがみつけ」

ハワイ先住民女性の訴え

ハウナニ=ケイ・トラスク著 松原好次訳

春風社 より引用







私たち日本人の多くは芸能人も含めて、ここぞとばかりにハワイを目指していく傾向にある

ように思います。ハワイ先住民は100年前の王朝転覆から、アメリカの白人たちによって

土地を奪われ続け、先住民の文化までも観光客のために商業化されてしまいました。楽園

というアメリカ政府並びに観光業者の宣伝広告に踊らされた観光客が、怒涛のようにハワイ

に押し寄せ、その観光客のための施設が次々と建てられていくことになります。その建設地

は先住民にとって聖地であったり、先祖が眠っている土地であったり、日々の糧を得る貴重

な畑だったりします。このような開発により、先住民がどうなるかなど一切考慮されることは

ありません。アメリカの白人の頭にあるのは儲けだけなのでしょうね。自分自身の快楽のた

めに、他の人間が犠牲を強いられることに何の感情も起きないのでしょう。アメリカの何処が

民主主義なのでしょう。そしてそんなアメリカに追随している日本も同罪かも知れません。

しかし思うのですが、何故、世界の先住民たちはこのような理不尽な苦しみを一身に背負わ

なければならないのでしょう。文明化されていないというだけで、人間失格の烙印を押され、

土地や生活の糧、そして残念ながら心までもキリスト教の宣教師たちによって踏みにじられ

てきました。ハワイ先住民が大切にしていた「マーラマ・アーイナ」(大地を慈しめ)の文化は

崩壊の危機に直面していますが、それでも著者のように勇敢に闘い続けている姿は、先住民

全てにとって希望の光の一つなのだと感じてなりません。

2008年5月15日 (K.K)


 




日本の皆さまへ

本書をお読みになりましたら、次の二点を、じっくり考えてみてください。

1 ハワイの観光産業は、環境や文化を破壊するものです。この産業は、外国人が

牛耳っていて、もっぱら外国人を利するためにあると言ってよいでしょう。ハワイ

には年間700万近い観光客が押し寄せますが、そのうち五分の一は日本人で

す。さらに、日本人がハワイで使うお金は、平均的なアメリカ人の四倍です。日

本人観光客によって、先住民経済の依存体質が年々深まるだけでなく、私た

ち先住民の環境も急速に破壊されています。

2 沖縄と同様に、ハワイはアメリカの軍事的植民地と言えるでしょう。アイヌ民族

と同様に、ハワイ先住民は自らの土地を奪われた民族です。沖縄が沖縄の

人たちに返還されるべきであるように、北海道が先住民であるアイヌに返還

されるべきであるように、ハワイもハワイ先住民に返還されるべきなのです。

2002年3月 ハウナニ=ケイ・トラスク


 
 


本書 はじめに より引用


王朝転覆からほぼ100年が経過した現在、先住ハワイ民族によるこうした発言に、

たいていのアメリカ人はびっくりする。第一世界の消費社会にどっぷり浸かっている

うちに、ハワイは、ホットドッグやCNN同様、アメリカのものだと信じるようになって

いるからだ。さらに悪いことに、アメリカ人は、チャンスがあれば自分も帝国の足跡

をだどって甘美な楽園に分け入り、椰子の木が陽光を浴びて生い茂る様や、娘た

ちが腰を振って踊る様子を満喫したいと考えるのである。私のふるさとの地と文化

をこのように略奪しようとする考え方に対して、異議を唱えるだけでなく、怒りをあら

わにして決然と挑む先住民が増えている。現に、ハワイ先住民は、王朝転覆100

周年を、自決という基本的人権の否定に抗議するデモと、多数の逮捕者によって迎

えたのである。私たちは、先住ハワイ民族自身による政府の方が、アメリカという外

国の政府より好ましい、と絶えず思い続けてきた。アメリカ人がどのように考えよう

と、植民地に暮らす私たちの大部分は、自分の国が奪われたことをよく思っていな

い。私たちは、国籍も領土も独立国家としての地位も、すべて奪われてしまったの

である。私たちは決して暢気な先住民ではない。古代からの先祖の埋葬地は、ガラ

スと鋼鉄製のショッピングモールに姿を変えてしまった。そして、巧妙に灌漑され、

何千年にもわたって何百万もの人々を養ってきたタロイモ畑も、今では広大な駐車

場の下に埋まっている。環状の生け簀が巧妙に設けられ、養魚池(フィッシュポン

ド)として魚の飼育場所となっていた大きな湾には、ヘドロが沈殿し、ジェットスキー

やウインドサーファーやヨットが所狭しと暴れ回っている。ハッと息を飲むほど美しい

(しかしすぐに汚されてしまう)ビーチには、高層のホテルから年間600万人を超す

観光客が吐き出され、地元住民は近寄るすべを持たない。一方、ハワイ、マウイ、

オアフ、カウアイという大きな島々には、空軍の飛行場、演習場、武器貯蔵施設、

そして軍関係者以外立ち入り禁止の住宅地やビーチがあり、ハワイ先住民の頭

に、誰がハワイの所有者なのかを叩き込んでいる。それは、他でもない、アメリカ

合衆国という名の植民地主義国家なのだ。アメリカによる植民地化は、先祖伝来

の縁多い聖なる島々に、物理的な変形以上のものをもたらした。けばけばしいレ

ヴューを「ポリネシア風」として上演したり、フラやハワイ語を使って休暇旅行やコン

ドミニアムの広告を出したり、聖なるハイアウ(神殿・祭壇)や埋葬地を観光客の

リクレーションの場にして踏みにじり、先住民族にまつわるものを何から何までグ

ロテスクな形で商品化してしまった。そのうえ、私たちは、土地や水資源も取り上

げられ、日々の生活にも困るようになり、精神的ゆとりをなくしてしまったため、

文化を本来の姿で表現することができなくなってしまったのだ。文化の安物扱い

が至るところで行われているため(たとえば、相互的な愛と寛容という伝統的な

価値を意味する「アロハ」という語は、今や自動車、水道管から証券、エアコンま

で、あらゆる物を売り込むために使われている)、ハワイ先住民でなくても、観光

産業と政治家にせかされて、「心はハワイアン」に変身する。先住民族の精神が、

グロテスクに骨抜きにされてしまった事実を、このキャッチフレーズは雄弁に語っ

ている。経済の面から言えば、先住民一人に対して観光客が三○人という統計

は、土地や水、公共政策、法律、一般の人々の政治に対する考え方などが、

観光産業の浮き沈みに左右されることを意味している。外国人が押し寄せるこ

とによって、この私たちのふるさとで、先住民自身が肩身の狭い思いをしなけれ

ばならなくなっている。一方、ハワイ州は何百万ドルも観光産業に注ぎ込み、

振興会(ハワイ観光局)にまで資金援助をしている。観光局はテレビやラジオ

で、「観光産業に力を入れれば入れるほど、収入が増えます」とハワイの先住

民に呼びかけている。その結果、ハワイ先住民の「得る」ものが何かというと、

香港のような恐るべき人口密度、アメリカ本土やアジアからの膨大な移民流入

による住宅不足、これ見よがしの金持ち旅行客を貧乏な地元住民が狙うため

に上昇する犯罪率、そして、水資源の枯渇といった列島全体を脅かす環境の

悪化である。そうした洪水を押しとどめることもせず、州政府は2010年までに

年間1200万人もの津波のような観光客を呼び込もうとしたり、経済の「安定」

を図るために、ロケット発射施設の建設や戦艦の母港化を奨励している。こう

した、先住民を貶める最近の動きは、私たちにとって、1777年にヨーロッパの

探検隊が初めてハワイの地を踏んだときから始まった、苦しみの続きに他なら

ない。キャプテン・クックの来航によって、「マーラマ・アーイナ」(大地を慈しめ)

という先住民特有の考え方はむろんのこと、2000年にわたる先住ハワイ文明

そのものが粉砕されてしまったからである。


ハウナニ=ケイ・トラスク「新しい世界秩序」を参照されたし


 


目次

日本の皆さまへ

謝辞

はじめに


第1部 楽園ではないハワイ

第1章 先住民の娘から

第2章 白人よ、「われわれ」とは誰のこと?

第3章 愛らしいフラ・ガールの手 観光産業と先住ハワイ文化の身売り


第2部 「白人大学」のハワイ先住民

第1章 ハワイ大学における人種差別 個人的かつ政治的な見解

第2章 人種差別主義と学問の自由

第3章 先住民学生の連帯 ハワイ大学の場合


第3部 先住民から見たハワイの歴史

ハワイ王朝転覆の真相


第4部 主権を求めて

第1章 先住ハワイ民族と人権

第2章 太平洋諸島の政治 帝国主義と先住民族の自決

第3章 新しい世界秩序


第5部 大地にしがみつけ

第1章 ハワイ先住民のナショナリズム

第2章 女性の力と主権回復運動

第3章 新植民地主義と先住民族


訳者あとがき

ハワイ語リスト





2012年7月14日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。



(大きな画像)

回転花火銀河(写真はNASAより引用)



もう直ぐ花火の季節になりますね。私の家のベランダからも厚木の「鮎祭り」の花火が見えるのですが、

直線にすると4キロ離れているので小さくしか見えません。



そんな時は双眼鏡の出番で10倍のものですと、この4キロが400メートルまで縮まりますので、迫力ある

花火の姿を見せてくれます。



ところで、写真の回転花火銀河(M101)ですが、皆さんがご存知の北斗七星の直ぐ近くにあります。



双眼鏡で何回か挑戦したのですが、やはり光害のない恵まれた空でないと無理のようでわかりません

でした。



視力が超人的な人は双眼鏡など使わず、裸眼で見ることが出来ると言われていますが、それでも暗

い空でないと見えないと思います。



この銀河は地球から2300万光年離れたところに位置していますが、この頃地球はアルプス・ヒマラヤ

地帯などで山脈の形成が始まった頃です。



またテナガザルやゴリラなどに近い類人猿が生まれた時代です。



その頃に旅立ちしたこの銀河の光が、今地球に届いているんですね。



ハワイのマウナ・ケア(標高4200メートルで「すばる望遠鏡」など各国の天文台が設置してある)で、い

つか満天の光を全身に感じたい、それは私の夢です。



きっとここでは回転花火銀河もその真の姿を見せてくれるのでしょう。



ただ、ハワイ先住民の文化は観光客のため商業化され、聖地や先祖が眠っている土地、そして先住民

の畑などが開発の名の下に破壊されてきました。



ハワイに行くとしても、ハワイ先住民が大切にしていた「マーラマ・アーイナ」(大地を慈しめ)の文化を感

じとる、そして間接的にも彼らの文化を傷つけない旅の仕方が求められているのかも知れません。



(K.K)



 

2013年6月21日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した写真です。



(大きな画像)


本日6月21日(4時15分〜43分)の夜明けです。

最後の写真はベランダに咲いたホワイトローズピカケです。ハワイでは頭・首・肩などにかける

花の一つで、ピカケは「孔雀」を意味しています。バラではありませんが、その香りは抗うつ作用

があると言われるほど気持ちを明るくさせてくれます。

☆☆☆☆








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