「ますらお」

クリンギット・インディアンに残された物語 

 北山耕平 再話 菊地慶短 作画 星雲社より引用

「Native Heart」(北山耕平さんのホームページ)









昔インディアンの若者や子供たちは火の周りを囲み、長老たちが語る物語を

楽しみに聴いていました。そこで語られる物語は、部族の歴史の中で起こった

教訓的なことがらです。人や自然の関わりを通して何が大切なことかを暗に教

え、若者や子供がこれからどう考え生きていかねばならないのかの基盤を作

る意味を持っていました。北山さんはイロコイ、シャイアン、ズニの各部族の中

で語り継がれてきた多くの物語の中から4つの物語を紹介しています。「アシ

ハヤ」は同じ年頃の仲間からからかわれていた存在でしたが、如何に「平和

の時」を守ったかが語られます。「星の少年」は空の国で育った少年が、亡く

なった母親の故郷を数々の困難から救う物語です。「鷲と少年」は家の仕事

をなおざりにし鷲の子供の世話ばかりしていた少年が、鷲と共に空の国に行

き、様々な経験を通して一人前の人間になっていく物語です。「ますらお」は

トーテムポールやワタリガラスの伝説で有名なクリンギット・インディアンが

舞台です。部族の皆からなまけものと見られていた「うすよごれ」は誰も知ら

れず秘密に鍛錬していました。そして村を襲う困難から救い、最後には世界

を乗せた柱を支える偉大な者になっていくのです。

(K.K)







アメリカ・インディアンの人たちは「物語を分けあうためには最低でも二人の人間が

必要である」と言います。その二人とは、ひとりは話し手で、もうひとりは聞き手です。

ネイティブ・アメリカンのストーリー・テリングにおいて、聞き手の果たす役割は重大

です。人が話す物語は、部屋が空っぽでも一方的に流されつづけている映画やテレ

ビ番組とは、まったくちがうものです。物語というのは、つねに語り手と聞き手の間

で互いに分けあうものなのですから。そうやって語りつづけられてきた物語は生き

ものであり、ある人はそれを一本の大きな樹にたとえます。物語という樹にはたくさ

んの枝があり葉があります。それらのなかにはたくさんの経験と知識が詰めこまれ

ていて、よいお話は新しく語られるたびに新しい発見があるものだからです。また

物語が生きものであるという意味で、それを動物に譬えることもできるでしょう。

私がこのシリーズで文字に定着させてお聞かせした物語は、どれも言うならば「生

きものの骨組み」みたいなものです。この骨組みにどんな肉をつけ、肌をつけ、動

きをつけ、想像力を働かせ、不思議や、魔法をふりかけるかは、聞き手であるあな

たのこれからに任せられています。なんどもなんども繰り返して読んで、これらの

本を見なくてもお話が頭のなかから聞こえるようにしてください。あなたはこれから

さまざまなことを人生において経験するでしょう。自分を探して生きることは、カル

チャーセンターでは学ぶことができない経験です。そうやって学んだことをこれら

のお話のなかに加えていき、あなた自身のお話をつくりあげていってほしいので

す。わたしたちは語られる物語を失って久しいのです。自分を理解し、自分を取り

巻いている世界を理解するための物語を、これから自分たちでつくりだしていかな

くてはなりません。もし自分の暮らしがつまらないと感じているなら、それはそこに

物語がないからです。一方的に流されてくる娯楽がいくらあっても、分けあうにた

る物語がひとつもない人生はつまりません。あなたの物語に耳を傾けてくれる人

たちとあなたの物語を分けあいましょう。生きものとしての物語は、そこにこめら

れた力が正しいものであれば、そこにおのずから聞き手をつくりだします。あなた

は世界でいちばん最初に語られた物語を想像したことがありますか? 神さまが

人間をつくりだした最大の理由は、ほかならぬ神さまが物語を聞きたかったから

なのです。

北山耕平


「Native Heart」(北山耕平さんのホームページ)

「ネイティブ・マインド」「ローリング・サンダー」「インディアン魂(レイム・ディア)」

「シャイアン・インディアン 祈り」「虹の戦士」など数多くのインディアンに関する文献

を書いておられる北山耕平さんと奥様によるホームページです。このページにはホピ族

の指導者であったダン・カチョンバの「生命の始まりから浄化の日まで ホピ物語」全文

が掲載されています。また「セイクリッド・ウエスト/ SACRED WEST」を通してインディアン

並びにそれを取り囲む世界を知ることが出来るでしょう。他に奥様によるアメリカの砂漠

と太平洋のロタ島の旅行記も興味深いものとなっています。私自身北山耕平さんから、

「リトル・トリー」の真実をはじめ、多くのことを教えていただいたことを感謝しています。

北山さんの最近の文献として、「アシハヤ」「星の少年」「鷲と少年」「ますらお」

「アメリカ・インディアンに学ぶ子育ての原点」などがあります。







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