「ミハイル・タリ 名局集」 

チェス・クラシックス11

ピーター・クラーク著

水野優 訳 チェストランス出版








イギリスのチェス界では実力者だったクラーク氏によるタリの50の名局を、著者の深い敬愛と

憧憬の眼差しをもって詳しく解説している。タリが頭角を現した頃から世界チャンピオンになる

までの50局は、世界を酔わせた魔術師タリの、片鱗と完成へと向かった記念碑である。



またチェス文献の造詣が深い水野氏のサイト「チェストランス」は、チェスの文献など豊富

な紹介をしており、私ののページより遥かに充実しており勉強になるはずだ。水野氏は

今後も、有名な海外のチェス本を翻訳する予定らしいが、非常に期待しているし陰ながら

応援したい。




(K.K)


チェス盤の魔術師 ミハイル・タリ(世界チャンピオン)を参照されたし。


水野さんが訳された外国の本



「3手読んで勝つ戦術」アーヴィング・チェルネフ+フレッド・ラインフェルド著 水野優訳 チェストランス出版

「チェックメイトの技法」第2版 ジョルジュ・ルノー&ヴィクトル・カーン著 水野優 訳 チェストランス出版

「実戦的スタディ集」 チェス・クラシックス2 ハンス・ボウメスター著 水野優 訳 チェストランス出版

「チェス上達の手引き」 I.A.ホロヴィッツ+フレッド・ラインフェルド著 水野優訳 チェストランス出版

「チェックメイトの技法」ジョルジュ・ルノー&ヴィクトル・カーン著 水野優 訳 チェストランス出版

「グランドマスターのように考えよう」アレクサンダー・コトフ著 水野優・訳 チェストランス出版

「161 ミニチュア(短手数局)集」レナード・バーデン ヴォルフガング・ハイデンフェルト著 
水野優 訳 チェストランス出版


チェス文献「マスターの神局集」フレッド・ラインフェルド著 水野優訳 チェストランス出版

「チェス 終盤の基礎知識」ユーリ・アヴェルバッハ 著 水野優 訳 チェストランス出版

チェス文献「終盤の300題」アーヴィング・チェルネフ著 水野優訳 チェストランス出版

「いちばん学べる名局集」アーヴィング・チェルネフ著 水野優訳 チェストランス出版

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」ボビー・フィッシャー著 水野優訳 評言社

「ポーンの力」ハンス・モック著 水野優訳 チェストランス出版

 




本書 「序文」 より引用

P,H,クラーク


この「ミハイル・タリ名局集」は、1951年から1960年までの50局を収録している。その初期にはラトビア以外ではほぼ

無名の学生だったタリは、今日では世界チャンピオンだ。彼は、正当な理由もなく「現代のモーフィー」と呼ばれたわけ

ではない。これほど華麗かつ迅速に名声を得た20世紀のマスターが、他に誰もいないからだ。



頂点に上り詰めるのが例外的に速かっただけではなく、それを成し遂げたプレー・スタイルが全チェス界を驚嘆させ、

かつ魅了した。アリョーヒンの死後、ボトヴィニクとその追随者たちが10年以上の間、若い世代の挑戦者たちにほと

んど屈することなく頂点に君臨していた。そしてタリが現れた。比較的未熟で、多くの専門家によればスタイルに問題

があったにもかかわらず、次々と大旋風を巻き起こした。ソ連選手権を初制覇してからたった3年以内に最高の栄冠

を手にしたのだ。



今でさえ、タリのプレーには驚かさせるように思える。そこには、彼の絶え間なく魅力的なエネルギーのすべてが反映

している。彼の想像力と、複雑な課題を大胆に解決する力は、意外性の尽きない源泉だ。生来の戦術家と攻撃的

プレーヤーという点で、彼に匹敵する者が存在したかどうかさえ疑わしい。



タリの経歴と棋風は別の章で扱うので、ここでは詳しく述べないことにする。「ミハイル・タリからの言葉」と題した短い

序文も収録した。そこでは、チェスに関する世界チャンピオン自身の見解や意見が述べられている。最近ライプツィヒ

でのチェス・オリンピックの開催中に私のインタビューに答えたものだ。この機会に応じてくれた彼に感謝の意を表し

たい。



ゲームの選定に関しては、タリが強くなる過程をできるだけ完全に描けることを目標とした。だから、最後の数年に

ついては重点的に選んだ。注釈に関しては全力を尽くしたが、こういう作業の真の適任者はタリ本人しかいないと

思っている。最新定跡をある程度示す重要性も考慮した。それもすぐに時代遅れになるが、実戦に与える影響を観察

するのは興味深い。



タリが歴代の偉大なチャンピオンに加われるかどうかは、時を待たねば分からない。たしかに言えるのは、彼の

名局が紛れもない天才の証であり、チェスという競技を豊かにする役割を果たしていることだ。私は、タリの名局と

関われてとてもうれしい。読者にも、彼の名局から喜びと教訓が得られることを願っている。


 
 


本書 「タリの才能」 より抜粋引用



チェスは戦いである。この単純な文が、私が思うに、タリの才能を理解するための真の手がかりだ。彼以前のどんな

偉大なマスターよりも、チェスの性質と明解な理解とそれを補完するのに最適な才能と資質を兼ね備えてきた。



タリには、ラスカーアリョーヒンとの多くの共通点がある。ラスカーは、心理作戦の価値と、対立する人格間の戦い

でそれが果たす役割を初めて評価した。そして、タリと同じく若くしてチェス界の頂点へ到達した(シュタイニッツを破っ

た1894年には25歳だった)。しかし、スタイルに関しては違っていた。ラスカーは激しく複雑な局面にも造詣が深かった

が、それより戦略家と、とりわけ終盤の名手として知られていた。



一方、(特に若き日の)アリョーヒンには、今タリにはっきり見られる通りの才能があった。カパブランカの少し後だった

のは(若くして世界チャンピオンになる点では)不運であり、自分の番が来るのを待たねばならなかった。一方、タリが

上り詰めたのは、まさに旧世代が衰え始めた時期だった。



タリは、闘争本能とそれを生かせる武器を持っている。「戦術は中盤戦で最も重要な要素」と言ったのはタラッシュ

が、タリの成功がこれを証明するものは他にありえない。タリにとって、中盤戦は創造的アイデアを表現する本番の

舞台だ。そこでは、手綱を緩めて想像力を飛翔させ、持ち前の激しいコンビネーションへの衝動を解き放てる。



本書に収められたゲームは、タリの才能を極彩色で描き出しているが、そのいくつかの側面はかなり重要なので、

別個に解説すべきだと考えた。以下に続くのは、そのための実例だ。



タリの攻撃好きで、世界中がそれを知っている。そんな彼が何とか着実にこれほどの成功を収めていることは、

尽きない驚きの種だ。この秘密を説明する一つは、序盤への実践的な取り組み方だ。タリは理論を見事に駆使でき

るのに、単純で直接的な〈現代の定跡が許す範囲の)作戦で良しとし、戦略の問題に時間を使うことを避ける。この

点では肩を並べるモーフィーは、ピースが早く適切に動員されれば、強力な攻撃手段になることに初めて気づいた。



ひとたび中盤戦になれば、タリは、自分のピースが最も活発になるような激しくダイナミックな局面を求める。ここで

重要な言葉は「活発(activity)だ。思うに、タリのスタイルを一語でまとめるなら、この活発だろう! 彼はどんな局面

にでも生命を吹き込めるようだ。



 


本書に収録されているタリの名局

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Peter Hugh Clarke (1933 – 2014) Obituary now complete.

1935年、右が2歳のクラーク



Peter Hugh Clarke (1933 – 2014) Obituary now complete
Peter & Peggy Clarke

1962年、Margaretと結婚。彼女は1966年のイギリス女性チェス・チャンピオンです。



Peter Hugh Clarke (1933 – 2014) Obituary now complete
A little seen photo from the Munich Olympiad 1958 - Clarke vs Eliskases: game drawn



Peter Hugh Clarke (1933 – 2014) Obituary now complete
Alison Timms leads the graveside ceremony, with Peggy seated, with stick & blanket.


ピーター・クラーク(Peter Hugh Clarke) 1933~2014

1933年、ロンドンにて生まれる。1977年、イギリスの郵便チェス・チャンピオンになり、イギリスのチェス選手権では2位に

もなる実力者だった。1954~68年のチェス・オリンピックではイギリス代表として出場し、イギリスの新聞サンデー・タイムズ

に記事を書いていたが、タリとペトロシアンの伝記を書いたことでも有名。



 


ピーター・クラーク(Peter Hugh Clarke)の名局

Peter Hugh Clarke vs Roman Toran Albero
Hastings (1956/57) · Sicilian Defense: Najdorf. Amsterdam Variation (B93) · 1-0




clarke_toran_albero_1956.pgn へのリンク





Bent Larsen vs Peter Hugh Clarke
Wageningen zt (1957) · Old Indian Defense: Ukrainian Variation (A54) · 0-1




larsen_clarke_1957.pgn へのリンク





ピーター・クラーク(Peter Hugh Clarke)が解説した7局

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妻、Margaret E Clarkeの棋譜

Margaret E Clarke vs Lora Jakovleva
CCOL2-women final (1980) · Sicilian Defense: Najdorf Variation. English Attack (B90) · 0-1




clarke_jakovleva_1980.pgn へのリンク





ピーター・クラーク(Peter Hugh Clarke)の名局集

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ピーター・クラーク(Peter Hugh Clarke)の全棋譜

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