「最新 図解チェス 必勝の手筋」

渡井美代子著 松本康司監修 日東書院












世界チャンピオン・ラスカーの「チェスとは・・・・」 (本書より引用)

1894年26才のとき、初代世界チャンピオン・シュタイニッツに挑戦し17対7で勝って

第二代のチャンピオンになったエマヌエル・ラスカーは27年間王座を守りとおした偉大

なチェスファイターでした。親交のあったアインシュタイン博士が「あの馬鹿がチェスな

んかにうつつを抜かしていたために物理学が30年遅れてしまった」、と嘆いたという逸

話が示すようにラスカーは数学及び哲学お博士号を持ったたいへんなインテリでした。

1895年、ラスカーはロンドンで12回にわたりチェスについての名講義をしました。「Co

mmon Sense in Chess」と題するその議事録は爆発的な売れ行きを示し、世界各国語

に訳され合計100万部以上がアッという間に売り切れたとのことです。毎回、「紳士諸

君」で始まるラスカーの名講義の第1ページを紐解いてみましょう。ここでは哲学者なら

ではのチェスというゲームについての見解が明解に打ち出されています。「紳士諸君、

通常は定義から入るものですが、ここに居られる諸君はチェスの歴史やルールや特徴

についての重要な事項についてよくご存知だと思いますのですぐに核心に入ることを許

してくださると思います。チェスは次のようにいわれてきました。『チェスは真剣な目的を

追求するものではなく暇つぶしのために作られたものである・・・・』。私にいわせればそ

れは誤解です。もしチェスがただの遊びや暇つぶしだったとしたらこのように昔から続け

て今も存在する真剣勝負に決して生き残ってこなかったでしょう。少なからぬ熱烈な愛

好者達によってチェスは学問または芸術として昇華してきているのです。またいうでしょ

う、『チェスはそのどちらでもない・・・・』確かにその本来の特徴は人間の野生が歓喜す

る闘争であるという風に見えます。しかし、実際にはチェスは粗野な人間の感情を刺激し

て闘争者の肉体に目に見える傷をつけ、血を流し合う戦いではなく、科学的で芸術的で

純粋に知的な要素が切り離されることなく支配している、そういう戦いなのです」。哲学者

ラスカーのチェスについての見解はこの後、世界中すべてのチェス愛好者に浸透しまし

た。そしてその見解はその後国際チェス連盟がそっくりそのままチェスの定義として踏襲

する所となりました。